
トイレ つまりからのご提案
最初の2年間にニューヨーク連銀が資金を大量に投入していれば大恐慌は防げたという、バーナンキがフリードマンから受けついだ論がそもそも間違っているのである。
まず、1929年までのアメリカの好景気を引っ張っていた家計や企業は、すさまじい借金をしてレパレッジを上げていた。
資産価格が上がっている時は、レパレッジを上げてでもそれらの資産に投資する方が投資効率は上がり、ROE(株主資本利益率)も上がる。
借金をして購入した資産の価格が下げに転じると、巨額な借金を抱えている分、大変な事態に陥る。
実際、1929年10月の株暴落を見て「しまった」と思った人たちはたくさんいただろう。
彼らは巨額な借金を抱えたままで景気後退に突入すると、借金の返済ができなくなり、倒産に追い込まれることになるからだ。
そこで彼らは一斉に借金返済に回った。
みんながそれを同時にやると、家計の貯金の借り手はどこにもいなくなってしまうばかりか、企業もキャッシュフローを借金返済に回すことになるので、これらの資金は銀行に入ったまま出られなくなる。
貯蓄や借金返済をする人は大勢いるのに、それを借りて使う人がいなくなれば、その分総需要が減少し、景気が雪だるま式に悪化する。
景気が悪化するとレパレッジが高い借り手は借金が返済できなくなり次々と倒産した。
多くの借り手が倒産すると銀行の融資は次々と不良債権化し、そのことが銀行危機を引き起こした。
しかも過剰債務を抱えている人たちは、そこから脱却するのが最優先課題となり、中央銀行がいくら金利を下げてもお金を借りようとしない。
その結果、金融政策は無力化され、当時のフーパー大統領が財政出動で経済活動を維持することを拒んだため、総需要は雪だるま式に減少し大恐慌が発生したのである。
言い換えれば、今までの経済学には「企業や家計が借金返済に回る」という視点がまったく抜け落ちていたのである。
ケインズにもフリードマンにも、この視点はない。
だからバブル崩壊後に発生するこの種の不況の本質を見誤ってしまうのである。
ここで、大恐慌のきっかけとなるバブル崩壊のプロセスを整理しておこう。
起こさない。
前述のディナイアルの局面である。
1992年までの日本と20O7年までのアメリカはまさにこのディナイアルの世界にあった。
圧縮という自己防衛止走る。
もちろん、自己防衛は正しい選択であるが、みんなが同時に、借金返済や不良債権の処理に走れば、内需や資産価格は雪だるま式に悪化していく。
いわゆる「合成の誤謬」が発生する。
気づかずに、自分たちの努力は短期間でなんとか実を結ぶはずだと信じて行動するから、その結果、マクロ環境は個々の企業が借金返済を頑張れば頑張るほど悪化してしまう。
しかも民間資金需要がなくなるなかで中央銀行の金融政策も無力化される。
る銀行には資本投入するなど、財政政策で対応すれば「合成の誤謬」に終止符を打つことができる。
その一方でそうした対策が遅れれば、その分事態は雪だるま式に悪化する。
あの大恐慌の時も、そうした「合成の誤謬」が見られた。
銀行の倒産が多発するのは31年の後半からであるが、それは実体経済がどんどん悪化していたからである。
なぜ実体経済が悪化したかと言えば、今も述べたようにそれまでお金を借りて投資や消費を伸ばしていた企業および家計が一気に借金返済というそれまでとまったく逆の行動を採り始めたからである。
当時のデータを見ても、それははっきりしている。
大恐慌突入後の約2年間で、各企業や個人の収入も平均2割減少し、巨額の借金を抱えた多くの企業や個人は借金やその金利を払えなくなる。
だから銀行問題が発生したわけであって、銀行問題が発生したから多くの企業の資金繰りが悪化したわけではないのである。
他方、企業および家計が資金を借りるのではなく返済に回れば、銀行は当然お金を貸す相手がいなくなってしまう。
現に、29年から=2年までの間の民間銀行に対する連銀の貸付額は激減している。
民間資金需要が強ければ、民間銀行は連銀からの借り入れを増やし、それを準備金として貸し出しを増やすことができる。
実際に景気が良かった27年から29年までは、全銀行の準備金のうちの3分の一が中央銀行からの借り入れであった。
29年から銀行の方でもすさまじい勢いで中央銀行からの借入金を返していたのである。
バーナンキは、連銀がこの時期に大量に資金供給をすれば大恐慌は防げたと言っているが、民間銀行が要らなくなった資金を連銀に返している時に、連銀が民間銀行への資金供給を増やしても何の意味もないのである。
また、29年から33年の4年間に当初2万5OOO行あった銀行が一万5000行まで減少し、またそこで発生した取り付け騒ぎは多くの人たちの生活を直撃した。
フリードマンやバは救われたとしているが、これらの銀行の大半は流動性不足で閉鎖されたのではなく、債務超過に陥ったから閉鎖されたのである。
中央銀行がいくら流動性を供給しても、これらの銀行を倒産状態から救い出すことはできない。
第一章で紹介した現ニューヨーク連銀総裁のティム・ガイトナー氏の発言にもあるように、中央銀行の資金供給で銀行の財務体質を改善することはできないのである。
弱った銀行の体力改善には、中央銀行による資金供給ではなく、民間や政府による資本の投入が必要なのであって、それに気づいたルーズベルト大統領がRFCを介して資本投入したことで米国は大恐慌から抜け出すことができたのである。
この資本投入は政府がお金を出す財政政策であり、フリードマンやバーナンキの言う金融政策ではない。
ここにバーナンキとフリードマンの議論の重大な誤りがある。
彼らは民間の資金の借り手は常に大勢いるという暗黙の大前提であのような理論を展開していたわけだが、実際にそのような借り手はいなかったどころか、みんな借金返済に回っていたのである。
だから私は、バーナンキ、フリードマンの大恐慌に関する結論は基本的に間違っていると考えている。
今回の事態を受け、バーナンキもいずれそのことに気づくだろう。
それに気づくまでは低金利とドルで輸出をなんとか伸ばそうとするはずである。
だから今後のアメリカ経済は、たとえ他の分野は奮わなくても、輸出だけは頑張るだろう。
いくら頑張っても、輸出だけでアメリカ経済の残りの分野のマイナスをカバーすることはできない。
こうして見るとアメリカ経済は今後さらに減速していかざるを得ないというのが私の見方である。
個別銀行の存続や個別資産の価格維持(HPKO)よりも金融システム全体を救うことに政策の重点を置くべきだとしたが、この手法は米国の住宅問題にも当てはまる。
つまり米国当局は、これまでスーパーをつくってサブプライム関連証券を買うとか、住宅の差し押さえを減らす各種の手法を模索してきたが、これらはすべて政府主導による関連証券や住宅価格のPKO(価格維持政策)ということになる。
バブル崩壊後の資産価格は小手先のPKOではどうしょうもないことは、日本を含め各国のバブル崩壊が証明してきた。
バブル崩壊後の資産価格は結局それらの資産の収益還元価格まで下がり続けることになり、またそうなるまでは、新しい民間投資は期待できないからだ。
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